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〜 長編 連載銀魂夢小説 〜

『華、手折る頃』
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 長編連載 銀魂夢小説 『 華、手折る頃 』


 + 第 1 話

江戸の吉原、京の島原。

 

名だたる花街の中でも、ここ3代目吉野太夫のいる京の夕霧楼はとかく、賑わいを見せる。



私は、ここで生まれ育った。母の顔は知らない。
そして、3代目吉野太夫の見習いとして太夫のそばについて3年になる。


太夫はとても気さくな人で、キレイで、それでいて優しい。遊郭には珍しいタイプの人だった。






− 夕刻 −



日は沈み、夕霧楼の屋号に明かりがともる。



「いやだっ!絶対に嫌だぁっ!!!」


夕霧楼に私の声と足音が大きく響く。客が部屋から飛び出てくるほど、それはそれは大きな声で、私は騒いでいた。それもそのはず、私の初見世の日が決まったとあっては黙っていられない。



「んなこと言ったってなぁっ!逃げれるもんじゃねぇのはお前も分かってんだろうがっ!!!」


番頭はそう怒鳴ると私を殴った。男の力にかなうわけもなく、私は殴られた衝撃で壁に頭を打ち付ける


「イッタァ・・・」


「すっ、すまん、大丈夫かっ?おめぇは、大事な商品なんだからよっ」


そう言いながら出された手を叩き払う。


「商品なんかじゃないっ!さわるなっ!」


「っんだと、このっ!優しくすりゃあ、調子に乗りやがってっ!」


番頭はそう言うともう一度手を振り上げた。

殴られるっ!そう思った私は、反射的にぎゅっと目をつぶる。とそのとき、



「こらぁあああっ!私の葵に何してくれとんじゃっ!!!このボケがぁああっ!!」


そう言うと太夫の平手が番頭の頬に決まり、バシッっと言う音が響いた。

太夫のあまりの気迫にその場にいた全員が静まり返る。



「すっすんませんっ」
すると気迫に押された番頭が床に頭をつけて謝った。



「ごめんですんだら、警察も真撰組もいらねぇんだよっ!!商品って言うんなら、商品らしくもっと丁寧に扱いなさいよっ!!」


そう一喝すると、太夫は私のそばにすっと立ち


「あんたも、この街にいる以上はルールに従うしかないんだよ・・・わかるでしょ」

そう言うと、私の頭をポンッと叩いた。



それを合図に・・・私の両目からは涙があふれてだす。手でぬぐっても、ぬぐっても・・・
止まらない涙が頬を伝って着物と床に染みを作る。



絶対に嫌だった・・・あの人以外のものになるなんて。

こんな街にいて、そんな普通の女の子が抱くような気持ちが許されるはずがないのはわかっている。


だけど・・・あの人以外に抱かれるなら死んだ方がましだと思う。








あの人を初めて見たのは、ちょうど私が太夫について間もない頃。その人が訪れると夕霧楼は女の甲高い声であふれる。来るときはいつも、何人かが一緒だったけれどすぐにわかる・・・


片目の包帯と艶のある黒髪、そして何よりも独特の雰囲気。


夕闇がおりてきたような、そんな雰囲気を持つのは彼しかいない。
その名を高杉晋助という。




彼は、夕霧楼を訪れるといつも太夫を指名した。私は太夫に見習いとしてついていたので、必然と彼の顔を見ることができた。その整った顔立ちに見とれていたのを今も覚えている。


けれど、不思議だったのは・・・太夫を抱いている様子が全くなかったこと。


太夫は簡単には抱けないので巷でも有名だったけれど、高杉さんのときは太夫は本当に楽しそうに笑いながら、友達のように三味をひいたり、酒を飲んだり・・・



あまりにも不思議だったので太夫に一度聞いたことがある。



  『太夫っ、あっあの・・・高杉さんとは、その・・・』 私の質問に太夫はクスクス笑いながら、


  『んーーっ?あんな奴好きになっちゃだめよ〜!

   全く、遊郭にきて太夫を指名しておきながら、一度も手をつけないなんて失礼もほどがあるわ』


そう言っていた。







---


そんなある日。私が、太夫のお使いで外に出たときの事





「太夫にまたおこられちゃうかな・・・」

お使いの帰り、寄り道をせず帰ってくるよう言いつけられていたのに。


私は街のはずれにある藤の花が見たくて、ついつい寄り道をしてしまった。

狭い路地を走って角を曲がると、目の前に広がるのは幾重にも折り重なるように咲く、薄紫の藤の花。



「わぁあっ・・・」


あまりの見事さに、私は言葉を失ってしまう。

太夫は藤の花が大好きで、先日内緒でここにつれてきてくれてから私は何度もここに来ていた。



藤の花は太夫が挿している簪に似ている。そして、紫は・・・高杉さんの色。

いつも紫の着物を着ている高杉さんを思い浮かべ、私は一人でくすりと笑った。


どれくらいそこにいただろうか、私は帰らなければと思いながらも・・・
藤の花を手にしたい誘惑に駆られていた。


それは、太夫が挿している簪がとてもきれいだったから・・・。
今の私にはとても手に入らない高価な物。けれど、それに模したものが私の目の前に垂れ下がっている。



私は誘惑には勝てなくて・・・


「一房くらいなら・・・いいよね?」

そばにあった生垣にのぼり、手を伸ばす


「もう、ちょいっ!くっ・・・」

てを伸ばしてもなかなか届かない私は、さらに不安定な体勢になり手を伸ばした


『触ったっ!』と思った瞬間、バランスを崩す



「うわっ!!」


落ちるっ!そう思ったそのとき、後ろから誰かに抱きとめられる。
その人は、私をゆっくりと降ろしてくれた。




「おいっ」


そう後ろから声をかけられ、怒られるっと思った私は、慌てて相手も見ずに頭を下げる。
こんな事が知れたら太夫にまた、迷惑をかけてしまう。



「すっ、すいません!!あの、すいませんっ!」


平謝りに謝っているとその人はクククッと笑うと



「おめぇ、吉野んとこのガキだろ」


「!?」


何で知ってるんだろうと思いながらも、聞き覚えのある声にハッとする。

私が頭を上げるとそこには・・・


「たっ高杉さんっ!!」

私のことを覚えていてくれた嬉しさと、こんなところを見られてしまった恥ずかしさで顔が真っ赤になる。


「あっ、あのっ、なんでこんなところに・・・」



「おめぇには関係あるめぇ」



そう冷たく言われた私は、何も言えなくて俯いてしまう。確かに私には関係ない。

そんな私の様子を見た高杉さんが、『チッ』と軽く舌打ちするのが聞こえた。



「・・・・」

私はそんなに気分を害するような事をしてしまっただろうかと思うと申し訳なくて・・・この場を離れようと口を開いた。



「あっ、あの・・・ありがとうございました」

そう伝え、足早に去ろうとしたその時。グッと腕をつかまれた。



「エッ!?」

一体何事かと、私が高杉さんをみると・・・


いつの間にかその手には、私が欲しかった藤の花が一房握られていた。




「これが・・・欲しいんじゃねぇのか」



そう言いながら、手に持った藤の花を顔のそばまでつまみあげたかと思うと・・・
その一花を唇でむしりとった。




私は、そのあまりにも艶っぽい仕草に言葉を失い、見とれてしまう。

私がぼうっと突っ立っていると、いつの間にか高杉さんがそばに立っていた。
そのあまりの身体の近さに、驚いた私はビクッとする。


そんな私を見た高杉さんは


「ちょっと、じっとしてろ。動くなよ」



そう言うと、私の頭に・・・手に持っていた藤の花をそっと挿してくれた。





高杉さんの行動に、私は驚きすぎて声が出ない。そんな私の様子を気にすることもなく



「ガキでもこうすると一人前の花魁だな」

一人で納得したようすの高杉さんのその言葉に、私は顔が真っ赤になる。




「・・・礼ぐらい言えねぇのか」

そう言われ私は慌ててお礼を言おうとしたそのとき





「言えねぇんなら、仕方ねぇな・・・」


そう言うと、私の顎に高杉さんの手が当てられ、無理やり上を向かされる。



「っ!? あっ、あの」





私の次の言葉は・・・高杉さんの唇で防がれた。


「んっ!? んっ、んんっ」


初めてで・・・息の仕方もわからない私は、すぐに息が上がってしまう。



「んんっ・・・はぁっ、はぁ・・・ふぁっ」


苦しそうな私の為か、一瞬離された唇は・・・

もう一度塞がれた。
先ほどより、さらに激しく。



藤の花の甘い香りと口付けで、開放される頃には、立っていることもできなかった。

口端からはどちらものとわからない銀の糸が一筋流れ落ちる。



「はぁ、はぁ  、はぁっ 」



ズルズルっと崩れるように座り込んだ私を見た高杉さんは、ククッっと笑いながら


「花街にいる割には、いい反応するじゃねぇか」

そう言うと親指で唇をくいっと拭い、ニヤリとした。



私は必死で上がる息を抑えながら、疑問の言葉を口にする


「なん で・・・、はぁっ」




「なんで? 礼をもらってやっただけだ」


そう言いながら、またニヤリとするその姿に・・・なんて強引な人なんだろうと思った。
私にとっては初めてのキスだったのに・・・・




「礼ってっ!そんなっ・・・」

と言い返そうとすると、私の言葉をさえぎるように突然、




「お前、名前は?」



「あっ、葵です」



「そろそろ帰らねぇと吉野の奴がうるさいんじゃねぇーのか」




高杉さんにそう言われ、私はハッとする。気がつくとあたりは薄暗くなりつつある。
太夫のことだ、絶対心配して怒ってるに違いない。




「あっ、あの・・・私、帰りますっ!」

私はそう言うと、慌てて走り出した。



----


 






 

あれから、何度も・・・太夫の元にきた高杉さんと出逢ったけれど、あのときの事を覚えてすらいないんじゃないかと思うくらい、それぐらい私には無関心のようだった。


だけど、私は忘れなくて・・・





「ふぇっ・・・ぐすっ・・・」


私が声を我慢して泣いていると急に楼の中が騒がしくなった。
姉さん達の色目を含んだ甘ったるい声が聞こえる。



「ちょいと行ってくるよっ。あんたは、しばらくここにいなさい。いいねっ」

そう言うと太夫は声のする店先へと向かった。


どこの旦那が来たのかはしらないが、今の私にはそんな事を気にしている余裕などなかった。
ただ、初見世の日が来るのが恐ろしくてたまらない。




「たかす ぎ さん・・・」


会いたくて、例え会ってもどうなるものでもない事はわかっている。

けれど、名前を声にせずにはいられなかった。



っとその時、





「なに、泣いてやがる」





「!?」


その声に驚いた私が振り向くと、そこには太夫と高杉さんの姿があった。




「いえね・・・この子の初見世が決まったんですよ。それで、ちょっとね」


太夫のその言葉に納得したのか、高杉さんが太夫に何かを耳打ちしている





「本当にいいんですかい?」


太夫はニヤリとすると私を手招きした。




 



 


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