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〜 長編 連載銀魂夢小説 〜

『華、手折る頃』
 高杉様

『記憶』 銀高桂坂土沖


〜短編 銀魂夢小説 〜

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〜 3Z短編 夢小説〜

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『雲と糸』


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 3Z 短編 銀魂夢小説 『 雲と糸 』  リクエスト小説 


 + 第 1 話

いっつもフワフワしてて、掴みどころがない雲みたいなアナタ。

アナタをつなぎ止めておける糸が欲しい






今日は木曜の3時限目。


私は次の授業の事で頭がいっぱいだった。
だって、次の授業は・・・坂本先生の地理だから。




授業の終わりを告げるチャイムの音が待ち遠しくて。それでいてイライラする。


『早くっ、早くっ、早く終わってよぉおお!早く先生のとこ行きたいんだから!』

そう思いながら黒板の上にある大きな時計とにらめっこをしながら授業が終わるのをカウントする。


 あと、5分、3分、1分・・・ キーンコーン、カーンコーン・・・


私が待ち望んでいた授業の終わりを告げるチャイムの音が学校中に鳴り響く。



「じゃ、次までに復習しとくようにな」

そう言いながら銀八が教壇に広げた本を手に取ると教室を出て行った。



「やったぁ!終わったぁ!」

銀八の言葉なんて耳に入っていない私は大声でそう叫ぶ。
周りのみんなが注目するのも気にならない位、この時間を楽しみにしていた。

私は、地理の教科書を机におくと慌てて教室を飛び出した。



目指す場所は・・・地理資料室。

次の授業で使う資料を取りに行くのが私の役目。


坂本先生と唯一2人話すことができる、私にとっては宝物のような時間だった。



少しでも長く坂本先生といたくて・・・廊下を猛ダッシュしていたそのとき、

先ほどまで授業をしていた銀八が目に入る。


嫌な予感がしたけれど・・・この道順が資料室までは一番早い。
私は瞬時に決断すると、このまま猛ダッシュで追い越すことに決めた。



スッっと銀八の横をすり抜けたっ!っと思ったその瞬間。グィッと銀八に腕をつかまれる。




「ちょっイタっ!先生何すんのっ!?」



「廊下走るんじゃねーよっ」



「だって、急いでるんだもん!お願い、見逃してっ!!」


私は片手でお願いポーズを取りながら、捕まれた腕を引っ張るけれど・・・一向に放してくれる様子がない。



「先生!本当お願い!!!休み時間終わっちゃうよぉ」

涙目で銀八にそう訴える。

私は本当に泣きそうだった。この時間のために1週間を過ごしていたと言っても過言ではない。


『会いたいっ、会いたいよ、坂本先生に会いたいっ』


心の中が坂本先生の事でいっぱいで、叫びそうだった。そんな私の様子を見ると銀八は




「お前なぁ・・・毎週、さっきの授業だけ俺の話全く聞いてねぇだろ」



「そっ、それは・・・その・・・」


まさか、『次の授業の坂本先生の事で頭がいっぱいで・・・』なんて言えるはずもなく、私は答えに詰まってしまう。



そのとき、


「こりゃァアアアア!!!銀時ィイイ!わしの可愛い生徒に何しとるかァアアアッ!!!」


その叫び声とともに銀八の体が宙に舞う。




「イッテェー・・・・んだとこらぁっ!!いきなり跳び蹴りするこたぁねーだろぉおお!!!」

起き上がり様に銀八がそう叫ぶ。



私は突然の事で何が起きたか分からず、ぼうっと突っ立っていると、坂本先生が心配そうに


「大丈夫か?何もされとりゃせんか?」


そう言いながら、私の全身をチェックし何もない事を確認する。



「だっ大丈夫です!!!そっその、私が廊下走ってたんでちょっと注意を・・・」



「おー、そうか、そうか。それならええんじゃ」

そう言いながら私にニコっと笑うと頭をくしゃくしゃっと撫でてくれた。


「先生・・・ありが」

私が坂本先生にお礼を言おうとしたその時、



「何がいいんだ、こらぁっ!!!お前ら、無視かァアアア!!」

そんな私達のやり取りを見ていた銀八が叫んだ。



「すまん、すまん。わしゃ、てっきりおんしがアイカに手ェ出しとると思うたもんで・・・」


そう言うと坂本先生が私の首に腕を回す



「!?」


先生の突然の行動に・・・回された腕が、体が近すぎて、私は恥ずかしくて俯いてしまう。





「銀時ィ、例えおんしでも可愛いわしの生徒に手ぇ出したら・・・許さんぜよ」



そう言った先生の言葉に『お前だけが大切だ』と言われているようで真っ赤になる。
先生にとっては・・・生徒のうちの一人だと分かっていても。



先生は、銀八にそう言うと私の手を掴み、教室へ歩き出した。







廊下にはあっけに取られた銀八が残された。



まだ、出してないですけどぉ・・・ったく、んなに大事なら首に縄でもつけとけっての。」


銀八は誰もいない廊下でそう呟くとパンッパンッとほこりを払い職員室へ歩き出した。







先ほど、捕まれた手は・・・今もつながれたままだった。


周りの生徒が何事かとチラチラっと見ているのがわかる。


『やっぱりまずいよね・・・先生と手つないでるみたいに見えるし』


私としては、ずっと捕まれていたいけれど・・・先生の立場を考えると、そうもいかない



「先生っ、あっ、あの・・・手を」


「んー?ああ、こりゃすまん、すまん。あんまり掴みやすい可愛らしい手しとるき。アッハハハハハ。」


そう笑いながら、そっと手を放される。
私は、いつもながらの先生の冗談だと思いながらも、思わず真っ赤になってしまう。



「先生っ!あのっ・・・さっきなんであそこに?」


教室に入る手前で、私は思い切って聞いてみた。
だって普段なら、授業が始まる手前まで資料室にいるはずだから・・・


それに、あんな風にまじめな顔をした先生は初めて見た。




先生は少し考えるようにすると

「そりゃあ、早よう会いたかったからぜよ。アッハハハハハ。ほら、授業始まるき、席に着きんさい」


先生は私の問いからスルっと逃げるように、いつものように笑うと授業を始めだした。





『また、そうやって・・・全部冗談なんだよね。きっと・・・』


私はなんとなく・・・

答えをはぐらかされたようで悲しかった。



席に着いても、いつもなら楽しい授業も半分上の空で・・・。
気がつけば、窓の外ばかり見ていた。

真っ青な空にふわっふわっの真っ白な雲がゆっくり流れていく。



先生は雲みたいだと思う。フワフワしてて、いっつもニコニコしてて。

だけど・・・本当のところは掴みどころがなくて。





そんな事を考えながら、気がつけば授業も終わる頃。


ふと、前を見ると先生と目が合う。
私はなんだか居心地が悪くて・・・ふぃっと目をそらしてしまった。



先生のことが好きすぎて・・・多分、私のわがままなんだ。

先生は私のことを生徒の一人としてしか見ていない。
分かってはいるけど、だけどあんな風に言われたら・・・勘違いしそうになる。





結局、その日一日、授業なんてまったく耳に入らなかった。私は、淡々と授業と部活をこなす。何もかもいつもどおり。だけど・・・私の気分は落ち込む一方で。



私が学校を出る頃には大きな丸い月が出ていた。







「お疲れ〜」

最後まで一緒だった、友達に別れを告げると家路に向かって歩き出す。


だけど・・・なんとなく家に帰る気がしなかった。
まっすぐ家に帰ってもきっと坂本先生の事しか考えられない。




「よしっ!」


そう言いながら、自分に気合を入れると私はクルッと踵を返し、繁華街の方へと向かいだした。

人がたくさんいる場所なら、少しは気分もまぎれるかな・・・

そんな風にしか考えていなった。









− 繁華街 −



私はこんな時間に繁華街に制服で来たことを激しく後悔していた。


仕事帰りのOLさんや会社員に混じって、制服は・・・あまりにも目立ちすぎる。



『どうしよう・・・もう帰ろうかな・・・』

そんな事を考えながら、歩いていると大通りからいつの間にか外れてしまっていた。





「ここ・・・どこよ?」

ふっと周りを見渡すと、来たことのない道。
人通りの少なさと、大通りにはない静けさが少し怖い。



『戻らなきゃっ』

私は、早足で元来た道を引き換えそうとしたそのとき





「うぐっ!?」




突然、後ろから手をひっぱられたかと思うと、手で口をふさがれ路地に引っ張り込まれた




「んーーーーっ、んーーっ!!!」


声を必死だそうにもふさがれて出ない私は、手足を死に物狂いでバタバタさせる。

と、偶然私のひじが後ろの男の腹に命中した。その瞬間、男の手から逃げ出そうとするも、足が思うように動かない。足が震えて、その場から動いてくれない。



「ぐうっ・・・」


そう呻きながら、私のひじが命中した痛みから、腹を押さえながら男が私を睨む。次の瞬間



「このっ、女ァアアアア!!!」


懐からキラリと光る得物を取り出したかと思うと、私めがけてその得物を振り上げた。


『もう駄目だっ!』 そう覚悟して次に来るであろう痛みに目をぎゅっとつぶる





だけど、その痛みが訪れる事はなく・・・代わりに、そこには得物を握る手を捕まれた男が呻いていた。

捕まれた手の痛みからすべり落ちた得物が、地面にあたりカランッと音をたてる。



次の瞬間、男は路地の中ほどまで吹っ飛んだ。



「!?」




驚いた私が後ろを振り返ると・・・


「さっ・・・坂本先生?」


街灯のおぼろげな光が後ろから射しているため、逆光で顔はよくみえない。



『なんでここに先生が?』そう思った瞬間、その人は自分の首に巻いてあるマフラーをするっと取ると私の目にそれを巻く。




まるで目隠しをされたような状況に不安が募ると、そっと耳元で


「大丈夫じゃ。もう大丈夫じゃき、安心せい・・・ええ子じゃから、ちょっとの間それは巻いたままにしちょけ。」



そう言うと頭をくしゃくしゃっと、昼間のように撫でられる。

私が、「うん」と頷くとその瞬間、先生が私の横を風のようにすり抜けたのが気配で分かった。




見えないけれど・・・音でわかる。

ドガッ、ドサッという音とともに、男の呻き声のような搾り出すよう悲鳴が聞こえる
そして、かすかに血のような鉄の匂い。





「先生っ!先生っ!もうっ、もういいからっ!」



普段温厚な先生が、どんな顔であの男を半殺しにしているのかと思うと・・・
不安でたまらなくなった私は、気づけばそう叫んでいた。


私の声で路地はまた、静まり返る。

先生がこちらに来る足音が聞こえ、私はほっとした。

先生の足音が私の前で止まる。私は目隠しを取ってもらえるのかとじっと、先生を待った。



「っ!?」


目隠しを取られる寸前、そっと私の唇に何かが触れた・・・





『今の・・・』
今の感触を確かめたくて・・・唇に手を当てようとしたそのとき、




「もう、目開けてもかまわんぜよ」



私は、驚きと不安と・・・そして期待。そんな感情が入り混じったまま目をあける

目の前にいたのは、いつもと変わらず優しく私を見る坂本先生だった。




先生の姿を見た瞬間、両目から涙が零れ落ちる


「せんせ い、こわ か ったよう・・・・」


先生に抱きつきながら、子供のように泣いた。本当に怖かったから。

私に向かって、得物が振り上げられた瞬間、もう駄目だと思った。先生に二度と会えないかもしれないと。




「もう、大丈夫じゃき、安心せぇ。すまんかったの、もっと早よう見つけとればこんな目にあわんでよかったのに。すまん。」



そう私に謝りながら、ぎゅっと抱き締めて、何度も何度も頭を撫でてくれた。

そうして、私が少し落ち着くと先生はそっと抱き締めていた手を、体を私から離した。



「先生?」



「・・・おんしは、ほんに雲みたいにフワフワしちょる。今日だってわしの知らんところでこんな目にあっちゅう、そんなことじゃき、銀時にも目をつけられるんぜよ。」


先生のその言葉と俯いたその顔に驚く・・・。初めてみる、本当に悔しそうな顔。




そんな顔をみたら・・・勘違いするよ?私。


「・・・先生の方が雲みたいだよ・・・。捕まえたって思ってもフワフワしてて・・・」


私はそう言うと先生の手からマフラーを取ると、両端を持ってふわっと先生の首にかける。

そして・・・グッっと引っ張った。先生と私の顔が唇が触れそうな距離に近づく。





「先生、私は先生が好き・・・だから、もう逃げないで」





そう伝えると、先生の唇にそっと口付けた。




触れるだけのキス。今の私にはそれが、精一杯だった。

唇を離そうとすると、いつの間にか私の首には先生の腕が回されていて




「んっ、んんっ」



何度も深く口付けられる。初めての私は、息ができなくて・・・


やっと開放される頃には、私の息遣いだけが路地に響く。



「はあっ、はあっ、ふっ・・・」




息も絶え絶えで、涙目の私をぎゅっと抱き締めると



「すまん。女のおまんから言わせてしもうた・・・ワシもおまんのことば、好いとる」

先生はそう耳元でつぶやき、




「これからは、遠慮せん・・・おんしもそのつもりでおるぜよ?」



そう言うと、ニヤリと笑いもう一度私に口付けた。




 



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